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「少年クラブ」1958(昭和33)年1月号~12月号

 ある日、麹町高級アパートの明智探偵事務所へ、ひとりのりっぱな紳士がたずねてきました。それは東京の港区にすんでいる神山正夫という実業家で、たくさんの会社の重役をしている人でした。その神山さんが、明智探偵としたしい友だちの実業家の紹介状をもって、たずねてきたのです。

 

 明智は、神山さんを応接室にとおして、どういうご用かと聞きますと、神山さんは、心配そうな顔で


「じつは、明智さん。わたしは怪人四十面相に、脅迫。(おどかすこと)。されているのです」


 と、恐ろしいことをいうのでした。


「エッ、怪人四十面相?そいつのもとの名は怪人二十面相ですね。しかし、そいつは、三月ばかりまえに、サーカスの怪人の事件で、わたしがとらえて、いまは、刑務所に入っているはずですが……」


 明智探偵は、いぶかしそうにいいました。

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