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「少年クラブ」大日本雄辯會講談社、1955(昭和30)年1月号~12月号

 東京のまん中にある有名なデパートで、宝石てんらん会がひらかれていました。そのデパートの美術部主任が大活動をして、日本じゅうの名のある宝石をかり集め、五階のてんらん会場に、きらびやかにちんれつしたのです。

 

 むかしの華族や各地方の名家の、だいじにしている宝石るいが、日本にもこんなに宝石があったのかと、おどろくほど集まったのです。宮さまからの出品もいくつかありました。

 

 集まった宝石の仲には、じつに、いろいろな美術品がありました。ダイヤモンドやルビーをちりばめた、ヨーロッパのある国の王冠、みごとなダイヤでふちかざりをした、イギリス製の置時計、サファイアをちりばめた黄金の手箱などから、日本のまがたま、中国の白玉の美しいさいくものなど、まるで、きらめく星にかこまれたようなちんれつ室でした。

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