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「少年」光文社、1960(昭和35)年1月号~12月号

 このふしぎなお話は、まず小学校六年生の天野勇一君という少年の、まわりに起こったできごとからはじまります。

 

 そのできごとというのは一つはたいへんゆかいな、おもしろくてたまらないようなこと、もう一つは、なんだかゾーッとするような、えたいのしれない恐ろしいことでした。

 

 ある春の日曜日、天野勇一君は、おうちのそばの広っぱで、野球をして遊んでいました。場所は東京の世田谷区の、ある屋敷町です。広いおうちのならんだ、屋敷町に、むかしながらに森のある八幡さまのお社がのこっていて、その前に野球のできるような広っぱがあるのです。

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