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小学校六年生の宮本ミドリちゃんと、五年生の甲野ルミちゃんとが、学校の帰りに手をひきあって、赤坂見付の近くの小公園に入っていきました。その小公園は、学校とふたりのお家とのまん中ほどにある三百坪ぐらいの小さな公園で、みどりの林にかこまれ、三分の二はしばふ、三分の一は砂場になっていて、砂場のほうには、ぶらんこやすべり台、しばふのまわりには、屋根のあるやすみ場所や、ベンチなどがあります。
いつもは、ぶらんこやすべり台で、たくさん子どもが遊んでいるのですが、その日はどうしたわけか、ひとりも子どものすがたが見えません。しばふのほうもがらんとしてだれもいないのです。
「まあ、さびしいわねえ。きょうはどうしたんでしょう?」
ミドリちゃんが、ふしぎそうにいいました。ミドリちゃんはからだも大きく、ふっくらした顔の色つやがよくて、快活な、しっかりした子でした。
「でも、あそこにふたりいるわ。おじいさんと、小さな子どもと……」
ルミちゃんが、そのほうを指さしました。
ルミちゃんは、ミドリちゃんにくらべると、ずっと小がらで、お人形のようにかわいい顔をしていました。
「あら、ほんと。あんなすみっこにいるもんだから、気がつかなかった。あのおじいさん、すばらしいひげね」
なんだかやさしそうなおじいさんなので、ふたりは、つい、そのほうへ近づいていきました。
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