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疑惑
「写真報知」報知新聞社、1925(大正14)年9月15日、25日、10月15日
「お父さんが、なくなられたと、いうじゃないか」
「ウン」
「やはり本当なんだね。だが、君は、今朝の〇〇新聞の記事を読んだかい。一体あれは、事実なのかい」
「…………」
「オイ、しっかりしろよ。心配して聞いているのだ。何とかいえよ」
「ウン、有難う。……別にいうことはないんだよ。あの新聞記事が正しいのだ、昨日の朝、目を覚ましたら、家の庭で、親父が頭を破られて倒れていたのだ。それだけのことなんだ」
「それで、昨日、学校へ来なかったのだね。……そして、犯人はつかまったのかい」
「ウン、嫌疑者は二三人あげられた様だ。しかしまだ、どれが本当の犯人だか分らない」
「お父さんはそんな、恨を受ける様な事をしていたのかい。新聞には遺恨の殺人らしいと出ていたが」
「それは、していたかも知れない」
「商売上の……」
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